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脱出せよ【黒子のバスケ】

第9章 再会


さつきちゃんは体育倉庫に救急箱を戻しに行った。


「お姉さん大丈夫?」


突如声がしてギョッとした。


「さ、佐藤君!寝てたんじゃないの?」

「んー、起きタ。」


たいして眠れなかったヨ、と大きな欠伸をする。

ちなみに虹村先輩も起きていて全く同じタイミングで欠伸をしていた。


「もう少し寝ててもいいんだよ?」

「いヤ…。時間ないシ…そろそろ呼ぶしネ。」


半ば寝ぼけ顔で彼は体育館の入り口を指差した。


「えぇいィ……」


気のないかけ声の後に


「わ!なんだ!?」

「体育館に戻って…!」

「もうまじ何なのこれ!」

「はっ!帰ったカエルがかえりみる!キタコレ!」

「伊月黙れ。」


…騒がしい軍団が突然現れました。


「ん…。全員無事みたいだネ。」

「わ!皆帰ってきてる!」


そして丁度さつきちゃんが戻ってきた。
虹村先輩と一緒に皆の所へ走っていく。私もそれに続こうとして佐藤君にパーカーの袖を引っ張られた。


「……僕ネ、そんなに時間がないんダ。」

「うん?」


突然の告白にちょっとびっくりしたけど、聞いといてあげなきゃ、と思った。


「…僕もいつか皆みたいになるかもしれなイ。僕モ、恨みがないって言えば嘘になる。

目の前にあいつがいたらそれはもウ…殺したいくらイ。

僕の左目はもう浸食してル。」


佐藤君が、少し包帯をずらす。そこに見えたのは、腐敗した皮膚。


「いつまで僕がもつかわからなイ。だからできることは今やりたイ。」

「そっか。」

「もう僕のためにこんなことはやめテ。僕の身は僕が守るかラ。」


怪我をした私の右腕に視線をうつむけて、顔を上げた。

7歳とは思えない顔だった。


「でモ、ちょっと今だケ…」


弱い人でいたイ。

そう言ってギュウッと抱きついてきた。

頭をなでたら、冷たい冷たい、人間とは思えない体温だけど。

ほんのちょっぴり、ポカポカしたものが伝わってきている気がする。





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