第9章 再会
「ンー、それならしょうがないネ。僕ちょっと寝るかラ。」
「寝るの?」
「うン。疲れタ。」
体育館のすみっこにヨタヨタと歩いてゴロンと寝転がった。
そして十秒もたたないうちに規則正しい寝息が聞こえてきた。
「え!?はや!」
「どんだけ疲れてたんだよ…。」
呆れつつも虹村先輩は自分が着ていた上着をソッと佐藤君の上にのせた。
「寝てたらガキだよな…。」
「大きく見えますもんねっ!」
多分虹村先輩はあの7歳で殺されたという現実を受け入れた大人っぽさと今の寝顔を比較したのだと思うがさつきちゃんがいいように勘違いしている。
「はぁぁぁ……。」
とりあえず一安心だ。
私は一気に気分が解放された気がした。
「あ、咲姫ちゃんの怪我…。ちょっと待ってて!」
おそらく体育倉庫と思われる扉を開き、その中へと消えていくさつきちゃん。
「お留守番が暇だったからいろいろあさってたの。そしたらこれ見つけたんだ!」
それは救急箱だった。特になんてことないごく普通の救急箱。
「なぜ体育倉庫に……?」
「なんでだろうねー?でも、これで治療できるよっ!虹村さん、こっち見ないでくださいね。」
「わかってるっつーの。てか俺も寝るわ。」
佐藤君の隣でこちらに背を向けて寝転んだ虹村先輩は、五分ほどで眠りについた。
その間に私の治療はほとんど終わっていた。
「よしっ!これで大丈夫!!!!!」
「ありがとうさつきちゃん!」
「あー…でも制服汚れちゃったね…。どうする?着る?」
怪我は二の腕にあったのでポジション的に服を脱がなければならなかった。
だが血がべっとりついた制服を再び着る気には……。
「なんないよね…」
「うん…。」
とはいえこのまま服をきないわけにもいかず。
「とりあえず私のパーカー着てて。あとで誰か着替え持ってないか聞こ?」
その意見に私は賛同した。