第6章 トリップ
赤司side
「…咲姫?」
さっきまでいたはずの咲姫がいない。咲姫が握っていた自分のジャージだけが残っている。
触るとまだ咲姫の体温が残っていた。
「……元の世界へ戻ったのか?」
真太郎が言ったとおりならいいのだがそうではないらしい。
「これって…?」
咲姫がいた場所には紙が落ちていた。桃井がその紙を拾えばそれにはなにか文字が書かれていた。
ツギハコノコガ
嫌な予感しかしなかった。
※※※※※※
「うー…」
頭がクラクラする。ガンガンする。
「体育館じゃない……」
目が覚めたのは机がたくさんある、ごく普通の教室。
「渡辺?」
「え?」
ふいに名前を呼ばれて振り返ればそこにいたのは
「虹村先輩!?」
中学時代の先輩である虹村修造先輩がいた。
「あり?ここどこだ?俺部屋で寝てたんだけど…」
口をとがらせて大きな欠伸をする。
変わってないなー…
「えーっと、まず何から説明しましょうか……。」
私は誰かに何かを説明するのが苦手。だからかなり時間がかかった。
こんな突拍子な話し信じてくれるだろうかと思ったが案外あっさり信じてくれた。
「なるほどな…。にしてもあいつらもいるとはなぁ。とりあえず体育館に行くか…。」
「でもここどこなんでしょう?」
キョロキョロとあたりを見渡せば虹村先輩が私の方をジーッと見ていることに気がついた。
「何ですか?」
「いや……。強いなーって。普通の女子なら泣くところだろ。」
「それ私に普通じゃないって言ってます?」
「まぁな。」
ひどいっ!こんなところも変わってない!
「ま、とりあえずここから出ようぜ。」
虹村先輩が横開きの扉を開ける。鍵はかかっていたが、こちら側に鍵がついていたのですんなりと開いた。