第9章 *7*
エレンは、そんな事を思いながら自分の右親指の付け根に噛み付くのだった。しかし、数分経っても変化は起こらなかった。涸れ井戸の遠くで待機していた、リヴァイとハンジ。
ハンジは、不思議そうな表情をしていた。
「合図が伝わらなかったのかな?」
「…いいや、そんな確実性の高い代物でもねぇだろ。」
リヴァイが、ハンジにそう伝えながら自分の馬から下りて涸れ井戸の中にいるエレンに呼び掛ける。
「オイ、エレン。一旦中止だ。」
「何かあったの?」
ハンジは、心配そうに涸れ井戸にいるエレンを見る。同様に、リヴァイもエレンを見る。見れば、エレンの手は噛み付いた後が大量にあり、血だらけだった。
「ハンジさん…。巨人になれません。」
そう、エレンは巨人になれていなかった。そういうわけで、この実験は中止となってしまった。そして、それぞれ休憩の時間となった。
しかし、ここで問題が発生してしまった。エレンの話によれば、噛んだ後の傷痕も巨人化と共に消えるらしいが、今回は巨人化になれず、自分の傷痕も消えないということだ。
「自分で噛んだ手も傷が塞がったりしてないのか?」
「はい…。」
「…お前が巨人になれないとなると、ウォール・マリアを塞ぐっていう大義もクソもなくなる。命令だ、何とかしろ。」
リヴァイは、エレンに睨み付けながら伝えては、離れていく。ペトラは、リヴァイの機嫌を直そうと宥める。エレンはリヴァイの言葉に、気を落としていた。
その様子を見ていたエルドは、そう気を落とすな、とエレンに言葉を投げ掛ける。勿論のことエレンは、しかし…と言葉を紡げば、エレンの隣に座っていたオルオが…。