第9章 *7*
「それが許されるのは、あなたの命が危うくなった時だけ!私達と約束したでしょ!?」
ペトラの必死な説得に、エレンの動きが止まっては僅かに目を見開いていた。しかし、すぐに表情を、戻しては噛む力を更に入れようとした時、エレン、とずっと無言だったリヴァイが口を動かす。
「お前は間違ってない、やりたきゃやれ。」
リヴァイの思わぬ言葉に目を見開くエレン。兵長!?と声を張り上げるペトラも驚いていた。勿論、リヴァイの声はキュラの耳にも届いていた。何を考えているのか分からないキュラは、目を細めてその様子を見ていた。
「俺にはわかる。コイツは本物の化け物だ。『巨人の力』とは無関係にな。どんなに力で抑えようとも、どんな檻に閉じ込めようとも、コイツの意識を服従させることは誰にもできない。」
リヴァイの話によれば、エレンと今まで戦ってきたリヴァイ班の判断の相違は経験則に基づくらしいが、アテにしなくていいというのだ。リヴァイは、馬を走らせたまま後ろにいるエレンの方を僅かに振り向いては言った。
「自分を信じるか、俺やコイツら調査兵団組織を信じるかだ。俺にはわからない。ずっとそうだ…。自分の力を信じても…信頼に足る仲間の選択を信じても……結果は誰にもわからなかった…。」
リヴァイは、囁くようにエレンに言い続けていた。リヴァイの言った通りなのかもしれない。結果は、誰にも分からない。それは、妖怪で長年生き続けているキュラ達にも、結果は分からない。
リヴァイは、前を向き…。
「だから…まぁせいぜい…悔いが残らない方を自分で選べ。」
エレンは、リヴァイの言葉をしっかり聞いてもう一度、後ろで女型の巨人と戦っている調査兵団を見ていた。