第5章 *3*
「シガンシナ区内の一室をじっくり調べ上げるためには、ウォール・マリアの奪還が必須となる。」
そう、シガンシナ区で調査するには、エルヴィンの言った通り、ウォール・マリアの奪還が必要となる。
エルヴィンは、ウォール・マリアの奪還の目標はこれまで同じだが、問題がトロスト区の扉が使えないという問題が起きている。
だがら移動するためには、東のカラネス区から遠回りする必要があるという。その為、エルヴィンは4年かけて作った大部隊の行路も無駄になった、とも話す。
「その4年間で調査兵団の9割以上が死んだ。4年で9割だ。少なく見積もっても我々が再びウォール・マリアに大部隊を送るには、その5倍の犠牲者と20年の歳月が必要になる…。現実的でない数字だ。」
エルヴィンの言葉に、先程とは違った緊張が走る。とても重々しい話だ。それを実現が出来るか出来ないか、人間である彼ら次第となる。
「20年か…。人間にとっては、長く感じるな。」
「僕達にとっては、そうでもない時間…。でも、その短い時間で大きく変化をさせるのが人間でもあるね。」
「変化…ね…。シーラの言った通りだね。だけど、人間が傲慢であることは何も変わらない。」
キュラは、冷たい瞳でエルヴィン達を見ていた。エルヴィンは、続けて説明をする。
「調査兵団は常に人材を求めている。毎回多数の死者が出ることによって慢性的に人員が不足している。」
エルヴィンは、最初から隠すことはしなかった。更に、エルヴィンは一月後の壁外調査に参加をさせるという話もする。
新兵は、最初の壁外遠征で死亡確率も5割だと話す。
「この惨状を知った上で自分の命を賭してもやるという者はこの場に残ってくれ。」