第4章 *2*
「私は巨人の前に仲間を何度も何度も目の前で殺された。調査兵団になった当初は憎しみ頼りにして巨人も戦ってた。」
この話は、過去に体験したハンジで何よりも気持ちを表していた。
「そんなある日私は気付いた。切断した3m級の生首を蹴っ飛ばした時だった。軽かったんだ、異常に巨人の体が。」
ハンジは、机に肘をのせ両手を包んではエレンにそんな事を語っていた。勿論、ハンジの言葉に、え?と目を見開くエレンの姿。
「そもそも本来ならあの巨体が2本足で立ち歩くなんてことはできないハズなんだ。どの巨人もそう…切断した腕はその質量にあるべき重量には到底達していなかった。エレンが巨人になった時も何も無かった所から巨人の体が現れたと聞く。」
やがてはハンジは、私は思うんだ、本当は…と更に語り始める。
「私達に見えている物と実在する物の本質は…全然違うんじゃないかってね。憎しみを糧にして攻勢に出る試みはもう何十年も試された。私は既存の見方と違う視点から巨人を見てみたいんだ。」
ハンジの視線は、どこか悲しみを宿しては空回りで終わるかもしれないけど…ね、とどこか弱々しく答えていたが、でも…と言葉を付け足す。
「私はやる。」
真剣な眼差しで、エレンを見る。それがハンジの想いだ。ここまで、巨人に対して研究するのはなかなかいない。それは、エレンにも伝わっている筈だ。
──調査兵団に入ってから驚かされてばかりだ。ハンジさんだけじゃない、変わり者だらけ…。これじゃまるで変人の巣窟。変革を求める人間の集団…それこそが調査兵団なんだ。
「エレン…あなたが実験に加わることで新しい何かがわかるかもしれない。それによって私達は一歩前に進めるかもしれない。」