第4章 *2*
「確かに…これまでとは状況が異なりますからね…。多大な犠牲を払って進めてきたマリア奪還ルートが一瞬で白紙になったかと思えば、突然まったく別の希望が降って湧いた。」
エルドが皆に説明をした後、一斉にエレンを見る。そう、別の希望とはエレンの事を指しているに違いない。今まで、人間が巨人になるという話は聞いた事もないからだ。
やがては、…未だに信じられないんだが…とエルドが言葉を繋げながら複雑そうな表情を浮かべる。
「『巨人になる』っていうのはどういうことなんだ。エレン?」
「…その時の記憶は定かではないんですが…。とにかく無我夢中で…でもきっかけに鳴るのは自傷行為です。こうやって手を…。」
エレンは、自分の手を目の前まで持っていこうとしたとき、動きが止まってしまう。
──あれ?そういえばオレは何でこれだけは知っているんだっけ?
エレンは、自分の行動に驚きを隠せていない。
「変わった人間もいるんだな……。」
壁に寄りかかってそう呟いていたのは、キュラ。その声を聞いたリヴァイ班。エレンは、驚きながらガタッ!と立ち上がる。
「お、お前らはッ!!」
オルオがキュラに向かって叫ぶ。勿論の事、エレンはキュラがなんなのかよく分かっていない。
「五月蝿い、人間共だ…。俺達が現れたぐらいで騒ぐな。」
「ど、どこから!?」
嫌そうな表情を浮かべながらリヴァイ班を睨み付けるクローク。思わず、質問をしてしまう。無理もない、扉はリヴァイの後ろにあるのにも関わらず何処から入ってきたか分からない。
もし、扉からと言うならすぐに分かる筈だ。しかし、先程まで扉は開きもしなかった。