第1章 出会い
今、彼は何と言った。私の聞き間違いでなければ、一目惚れをしたと言わなかったか。いやでもこれでただの聞き間違いだったらかなり恥ずかしい。自意識過剰にも程がある。穴があったら入りたい。寧ろ穴がなければ掘りたい勢いだ。ピシリと固まった私をまるで華麗にスルーして、赤司くんは続ける。
「良かったら…オレと、付き合ってくれませんか。」
待て待て待て待て。これはどうやら聞き間違いではなさそうだ。聞き間違いであってほしかったけれど。照れ臭そうに少し伏し目がちになりながら、僅かに頬を紅潮させる赤司くんはとっても美しい。男の子に綺麗とか美しいって言葉はあまり使わないけれど、彼は格好良さの中に美しさを兼ね備えている様に思えた。あれ、これって現実逃避かな。でも赤司くんほんとに格好良いなあ…こんな整った男の子初めて見たよお姉さんは。どんどん自分の意識が遠のいていく気がしたが、それを知ってか知らずか、赤司くんはなんとその綺麗な両手で私の大して綺麗でもない両手を包み込んだ。今私が平常心を保てているのなら、間違いなく叫んでいた。「ぎゃあ!」と。それは叶わず心の中で叫んだけれど。
「中山7さん…。」
「っとととととととりあえず!手を離そうか!ほら!私達会ったばっかりだし!」
「時間は関係ありません。オレは貴女に一目惚れしたんです。」
「いやでもね、私赤司くんのこと何にも知らないから!赤司くんだって私のこと名前くらいしか知らないでしょ!?」
「それはこれから知って行けば良いと思います。その為の今後ですから。貴女は頷いてくれればそれでいい。」
「……(ええ―――!?!?)」