第4章 恋敵
「…和成、バスケは?」
『あー…問題は、ソレなんだよね。』
確か従弟は幼い頃から根っからのバスケ少年で、大学に入学してからも続けていると聞いていた。自立するためにバイトを始めるのは確かに褒めてやりたいが、それではバスケする時間がなくなるのではないだろうか。私が言わんとする事をすぐに理解したらしく、従弟は悩んだように相談を始める。
バスケを辞める気はないが、一人暮らしとバイトを両立させたい。だが、そうなるとバイトできる時間帯は限られる。調べた結果深夜の時間帯なら自給も良く時間帯も合うが、それでは睡眠不足の為本業に支障が出てしまう。かといって日中のバイトでは時間帯が合わないどころか、恐らくバイト先の希望通りのシフトは組めないだろう。そもそも勤務時間が短く融通の利かない希望者を採用するかと言われれば、答えは否だ。
どうしたらいいだろうかと相談を持ちかける事自体、従弟にすれば珍しい。基本的に自分の事は自分で考えて向き合う敏い子だった。どうしようもなく躓く時は自分からSOSを出す事も出来ない子だった為、私が背中を蹴り飛ばしに行ったものだ。懐かしいなあと浸りながらも、一緒にうんうん唸りながらパッと閃いた。
「和成、アンタ明日時間ある?」
『明日? 明日は午前で授業が終わるから、午後なら。あ、でも夕方からは練習がある。』
「ん、充分。良いバイト紹介してあげるから、駅前に13時でよろしく。」
『えっ!まじで!?ほんとに!?』
「うん。言っとくけど怪しくも如何わしくもないから安心しなさい。騙されたと思って、明日おいで。」
『めぐみねーちゃんの紹介なら何の心配もしねーよ!サンキュ!まじ助かる!』