第3章 変化
ずるい。全部話を聞いてなお、そう聞き返すのは、とても狡いと思う。表情に出ていたのだろうか、私のそんな顔を見て、赤司くんは自嘲するように笑いながら言った。
「あなたを手に入れる為だったら、なんだってする。ずるくても、卑怯でも構わない。」
目を見開いて、またぼろぼろと零れ落ちる涙。私の返事を促すように目尻を撫ぜる指先にそっと瞼を落として、告げた。
「赤司くんが、好きです。」
瞬間、今までにないほど強い力で引き寄せられる。赤司くんの胸に自分を預けて、きつくきつく抱き締められた。それは想いの丈を表すように強く、腕は震えていて、ぎゅっと抱き込まれて感じる温かさがとても優しい。行き場が分からない自分の両腕は、きゅっと赤司くんの服を掴む事で落ち着かせた。すれば、ますます強まる腕の力。若干苦しくてそう告げたら、熱っぽい声で返される。
「やっと手に入ったんだ。少し、我慢してほしい。」
そんなことを言われてしまうと何も言えなくて、火照った顔を隠すように彼の胸に埋めた。トクトクと、自分と同じかそれ以上とも思える程早いリズムで鼓動が刻まれていく。緊張しているのは自分だけじゃないんだと少し安堵して、そんな彼がとても愛おしく思えた。あんなに辛くて悩んだ結果突き放したのに。敵わないな。弧を描く自分の口元をそのままに、私からもぎゅっと抱き付く事で誤魔化した。
まるで緩やかな川に流される様に、私は赤司くんに落ちた。