第3章 変化
「やっと、オレを見てくれましたね。」
泣き笑いの様にして赤司くんがそっと笑うから、傷付けたのは自分なのに、自然と涙が零れ落ちていた。何も言えずにはらはらと涙を流す私の目尻をそっと拭って、赤司くんは告げる。
「オレは、中山7さんが好きです。…あなたが、ほしい。」
その言葉に、止めようとしていた涙腺は一気に緩んでしまって、ぶわっと涙が溢れだす。涙を拭う事も出来ずにみっともなく泣き続ける私を見て、赤司くんの瞳にも薄い膜がキラリと光った。涙を流すほど、私を想ってくれている。その事実がどうしようもなく嬉しくて、苦しくて、辛くて。漸く絞り出した声は、震えていた。
「ごめん、なさい。」
「…それは、オレの気持ちに対して?」
「…たくさん傷付けて、ごめんなさい。」
赤司くんの問いに答えないまま、私は震える声で続ける。
自分では赤司くんに釣り合わない事。こんなふうに傷付けてしまった事。自分に自信がない事。恋愛経験が乏しい事。赤司くんを傷付けて自分を護っていた事。―――赤司くんに惹かれている事。言うだけ言ってもスッキリなんかしなくて、でも、伝えなきゃいけないと思った。さんざん赤司くんを傷付けて、自分だけを護っていくような卑怯な事はもうしたくなかった。自分の心の内を語る事はとても怖かったけれど、そうしなきゃいけない気がしたのだ。
ぽつりぽつりと話す私の言葉をずっと聞いていてくれた赤司くんは、話し終えた私の背をそっと撫ぜる。その手付きがあまりにも優しくて余計に泣いてしまった私の両頬をもう一度包み、言う。
「オレは、あなたが好きだ。他の事なんか考えて欲しくない。中山7さんの正直な気持ちが聞きたい。」
「…っでも、赤司くんと私じゃ、絶対に釣り合わないし、私の方が年上だし、」
「そんなことはどうでもいい。オレは中山7さんがほしい。…中山7さんは?」