第2章 再会
カフェでの勤務を終えて、流されるままに赤司くんと夕食を共にする事となり、突然の出来事に混乱する頭をどうにか落ち着かせて目的地の駅まで足を速める。赤司くんは今日は大学だったらしいのだが、私の勤務が終わるまで時間を潰していてくれるとの事で。その言葉にそっくり甘えるわけにもいかず、出来る限り早く行かねばと気持ちが急いでいた。案の定、待ち合わせ場所をぐるりと見渡せばそこには文庫本を片手に佇む彼の姿がある。待たせてしまった申し訳なさにすぐさま駆け寄ろうとしたのだが、すぐ横で聞こえた声に足は棒の様になってしまった。
「ねえ!あの人すごく格好良くない?」
「うわ、まじ!芸能人?モデル?めっちゃ格好良い!!」
「ヤバイよね!?…声掛けてみない?」
「えっ。でも、待ち合わせとかしてるんじゃない?」
赤司くんと同じ年頃の子だろうか。今時の大学生と見える女の子二人組が、間違いなく赤司くんを熱い眼差しで見つめて話をしていた。熱心に見られているのに赤司くんは気付いていないのか、それとも日常茶飯事で慣れてしまっているのか、どこ吹く風で涼しげに佇み本へ視線を落としていた。
そうだ。世間一般に考えて、赤司くんは格好良い男の子だ。そう思うのは、なにも私だけじゃない。今時風な彼女達は小奇麗に自分を着飾っていて、片や私は仕事終わりで飾り気のない、くたびれた格好。年齢だって、私の方が上で。容姿だって、決して飛び抜けて可愛いわけでも美人なわけでもない。そう考えた時、急に自分が恥ずかしくなった。何に浮かれていたのか。赤司くんから告白をされて自信過剰になっていたのか。なんて情けない。恥ずかしい。常識的に考えて、彼が私を相手にするはずがない。出会いこそ突然でドラマの様な出来事だったけれど、彼と私ではどう見たって釣り合わない。なんておこがましい。