第2章 再会
一つ一つ掻い摘んで話してくれるマスターに、もともと理解が早いのだろう赤司くんはすぐに納得した様だった。そして、事情も知らずに食事に誘ってしまった事を詫びてくれる。話していないのだから知らなくて当然なのだし、赤司くんが悪いわけではないと言えば、それでも彼は眉を下げた。そんな彼と私を見つめて、マスターはパッと顔を明るくして場違いに陽気な声を出す。まるで、名案を思いついた!とでも言う様に。
「そうだ!めぐみちゃん、今日赤司くんと食事に行ってきなよ。」
「はい!?え、ちょ、バーはどうするんですか?私とマスター以外にスタッフは…。」
「うん。だから、今日はお休みしようと思って。」
「…え?」
「これでも、最近のめぐみちゃんは働き過ぎだし負担をかけてるなぁって自覚はしてたんだよ。でも、何か理由がないとめぐみちゃんは休めない性質でしょ?だから、今日は羽を伸ばしておいで。」
にっこり。そんな言葉がピッタリ当てはまる様な笑みを浮かべ、マスターはルンルンと言い放つ。固まる私を放って、赤司くんが「良いんですか?」と問いかけるが、マスターは一も二もなく頷いてしまった。赤司くんに包まれた私の両手をにんまりと見やって、のたまう。
「めぐみちゃんに漸く訪れたロマンスの予感なんだから、赤司くん、よろしくね。」
ハートマークがつきそうなほどのその声色には赤司くんもビックリした様子だったが、まんざらでも無いように頷く赤司くんにますますマスターは笑みを深める。私と言えば、完全に置いてきぼりを食らっただけでなく、恋愛事情が筒抜けな恥ずかしさで顔から火が出る勢いだ。勘弁してくれ、と心の中で呟くより早く、赤司くんが包む手の力を強めて私に言った。
「中山7さん。今日…オレと食事に行ってくれますか?」
この空気、この流れでこの誘いを断れるほど、私の心臓は強くなかった。