第2章 再会
歯切れの悪い私の返答に、赤司くんは首を傾げる。そんな間も、手は包まれたまま。もうそれは気にしない事にして、チラリと奥に居るであろうマスターに視線を移す。すれば、そこにマスターは居なくて、ミカちゃんだけが興味津々に仕事をしながらこちらを見つめていた。マスターは何処に行ったのか、と視線で探すより先に、その答えがすぐ後ろから聞こえて肩を跳ねさせる。
「常連さんにしか話してないんだけどね。このカフェ、夜はバーになるんだ。」
「! マスター。」
「バー?」
すぐ後ろに立っていたマスターは、初めて会うだろう赤司くんに軽く挨拶を交わし、コッソリと真実を伝えてくれる。そう、私の働くこのお店。昼は穏やかな自然光の射し込む隠れた名店のカフェだが、夜は雰囲気を一転して、お洒落でミステリアスなバーへと姿を変える。バーを開店させたのは今から約1ヶ月前と最近で、カフェの常連様が主なお客様だ。もう少し落ち着いてきたら大々的に広めようとしているが、スタッフも少ない今は昼と夜の常連様で精一杯なのが現実。大学生のミカちゃんは学業を疎かにできるはずもなく、そうなるとスタッフはマスターと私のみ。初めて1月ではなかなか落ち着く事も出来ず、その結果、私は仕事に追われる日々を過ごしているわけだ。