第2章 再会
「とても美味しい。」
「え、あ、ありがとう…。」
流れる様に自然な動作で包まれた両手。伝わる体温に鼓動が忙しなく胸を叩く。ドギマギしながらも何とかお礼を言うが、この状況をどう切り抜けようかと必死で思考を回転させる。しかし、恋愛経験値の乏しい私にそんな高度なテクニックがあるわけもなく、振り払う事も出来ずに視線を泳がせれば、私が困っていると分かったであろう赤司くんが申し訳なさそうに眉を下げた。一瞬手を離してくれると期待したが、それは虚しく叶わなかった。
そして、意を決したように赤司くんは口を開く。
「…正直、中山7さんに避けられてるのかと思っていたんです。」
「えっ!?」
「何度食事に誘っても、その度に断られていたので…。」
寂しそうにする赤司くんは儚げで、とても美しい。午後の穏やかで柔らかな光が射し込み、よりいっそうその姿を惹き立てていた。そんな彼に一瞬見惚れてしまった自分を叱咤し、正直に話す。赤司くんの事は確かに戸惑いはしたが、決して迷惑と捉えた事は無いのだ。だって、彼はいつだってまっすぐだった。文面からも見てとれるほど、気を遣ってくれていたから。
「避けていたわけじゃないんだけど…でも、そういう誤解を招いたのは私の落ち度だよね。ごめんね。」
「いえ、オレの気持ちが迷惑ではなかった事が分かっただけで、ほっとしました。」
「迷惑と思った事は無いよ。ただ、今ちょっと仕事が立て込んでて…。」
「こちらのカフェの経営等ですか?」
「いや、うん、カフェというか、強ちハズレではないんだけど、ちょっと違うというか…。」