第2章 再会
「此処のカフェで働いていたんですね。」
「うん。赤司くんは初めて?」
「はい。友人から、美味しいコーヒーがあると聞いて。」
「そっか。マスター喜ぶよ、すごくこだわっているから。」
席に案内してからメニュー表を手渡し、何気ない会話をする。初対面以来会っていなかったし、話したといってもメールの中での文面上だ。少しばかり緊張しながらも何とかちゃんと受け答えできている自分にほっとしながら、赤司くんのオーダーを待つ。彼は少し悩んだ後にブレンドコーヒーをブラックで頼み、私の目を見て笑った。その仕草にドギマギしながらも、伝票を書いて下がろうとすれば、口を開いた赤司くん。
「中山7さんが居るなら、もっと早く来れば良かった。」
「え……。」
心底嬉しそうに頬を染めて微笑む赤司くんに一瞬ポカンとしたが、すぐに慌てて取り繕う。愛想笑いで何とか誤魔化し、今度こそ奥へ引っ込んだ。ブレンドコーヒーを挽きながら、そっと溜息を吐く。ニヤニヤと此方を見やるマスターとミカちゃんの居心地の悪い視線に耐えながら、出来たてのコーヒーを片手に再び赤司くんの席へ。静かにテーブルへコーヒーを置けば、綺麗な指がカップを攫って行った。
こくり。
飲み干すその仕草さえ、どことなく色気が漂う。味わう様にコーヒーを見つめ、下がろうとした私の腕を、赤司くんは言葉ではなく手で制した。そっと包まれた掌から、どんどん熱が伝わっていく。