第2章 再会
―――カラン
「いらっしゃいませ。」
考えている間も、仕事は待ってはくれない。私はとある小さなカフェ&レストランのスタッフだ。昼は小奇麗なカフェであるこの店は、学生時代からアルバイトをしていた馴染みの店でもある。店長―――基、マスターはわりと楽観的な人で、店に居る事は少ない。ほぼ私がすべてを任されている。スタッフは私とマスターと、大学生でアルバイトのミカちゃんの3名のみ。ちょっと入り組んだ路地にある為隠れた名店の様になっているが、のんびりと流れるこの時間が私は好きだった。だが、最近は店内のBGMもゆっくり選ぶ事も出来ないほどの忙しさに追われている。
「めぐみさん!3番テーブルにカフェモカ追加です。」
「はーい。あ、ミカちゃん、これ8番テーブルにお願いね。」
「分かりました。」
今日は大学の講義が午前中で終わったらしく、ミカちゃんは午後からこのカフェでキリキリ働いてくれている。その後ろ姿に笑みを零しながら、昼間の穏やかさが続けばいいのに、とついつい溜息を零してしまう。すれば、珍しく今日は店に居るマスターから言われてしまう。
「めぐみちゃん、幸せ逃げるよ。」
「逃げたらそれはきっとマスターのせいですね。」
「オレ!?」
「私の事は昼も夜も働かせて、自分はフラッといなくなるマスターのせいですね。」
「……めぐみちゃんには、頼っちゃうんだよねぇ。」
しみじみと、伸びてきた顎鬚を撫でつけながら悪びれずに言うマスターに更に溜息が零れる。出来上がったカフェモカを3番テーブルに届け、笑顔で対応していればマスターもにこにこ笑っている。結局のところ、頼りにされることも仕事に追われることも決して嫌ではないのだから、仕方ないのだろう。
「めぐみさん、最近眠れてます?」
「ん?うん、睡眠時間は短くなったけど、布団に入ればおやすみ3秒だよ。」
「…マスター、めぐみさんそのうち過労で倒れますよ。そんなことになったら、私この店辞めますからね。」
「えっ!?ミカちゃん!?」