第6章 *記憶
「…………ねぇ」
ふと、希美が口を開く。
少しだけ声のトーンが下がっていたのは、きっと気のせいだ。
「美亜は……何か知らない?」
それは唐突な質問。
本当は素直に答えなくてはいけない質問で、けれど私は嘘ばかり言う。
「……し、知らない、よ」
思わず声が震えた。
しかして、彼女は知っているんじゃないのか?私が嘘を吐いていることに。
もしもそうだとしたら、何て言われるんだろうか。
バカ?最低?
怖い、怖い、怖いーーー!
けれど、彼女は興味無さそうに「そっか」とだけ言った。
あまりにも興味が無さそうな返事で、私は少し驚く。それと同時に、安心する。
……いや、違う。本当は望んでいた。何か言われることを。
だって私は最低だから、中途半端に優しくされるより、冷たくされた方が楽だから。