第5章 *夢
苛々するな、と言われたって…。
そう思い、ため息を吐いた。
ふと、そのとき。
『…良いのかなぁ』
目の前の彼女が、口を開く。
意味深な言葉に、思わず問い返す。
「どういうこと?」
『どういうこと、も何も無いよねぇ。…アンタだって、分かってるんじゃないの?』
そう言って、彼女はくすくす笑う。
その言動に、またイラリ。
『おっと、怒らないでね。…ほら、あの子のこと。キオクソーシツのあの子だよ?』
あの子。
それは即ち、希美の事なのだろう。
『やっと分かってくれたみたいだねー。ほんと、物わかり悪くて嫌になるなぁ』
そう言って、またくすくすと笑う。
…あぁ、うざったい!
そう思うのに、何故か声が出ない。
『私が言いたいのは、あの子が覚えてなくてアンタが覚えてること、あの子に言わなくて良いの?ってこと』