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Orange【黒子のバスケ/短編集】

第1章 桜ソング【宮地 清志】


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バスケの知識は授業で教わる程度しかなかったけれど、
中学のときからマネージャーという仕事に憧れていた私に

「マネージャー?んじゃ、バスケ部とかどうよ?」

なんて声をかけてくれたのは、
同じクラスで中学からの友達の高尾だった。


見学だけでも、と半ば強引に連れて行かれた体育館。

そこで初めて出会った三年生の宮地清志先輩。

大きいし、物騒な言葉で怒鳴っていて
なんだか怖そうな人だなというのが第一印象。


1時間ほど見学させてもらう間、
大坪先輩が私の隣で色々と説明をしてくれた。

バスケットボールという競技について、
年間スケジュールや大会のこと、マネージャーの仕事、
今いるメンバーの軽い紹介なんかを。

「今は一年がマネージャーの仕事も兼ねているんだ。
みんなは別に苦じゃないと言うが、やはりもっと集中して
練習させてやりたくてな……」

そう私に話してくれたことを覚えている。


高尾がたまたま声をかけてくれただけ。
そう言ってしまえばそれで終わりなのだけど、
偶然は必然とも言う。

それに、大坪先輩の説明を受けながらも、
コートで走る宮地先輩の姿に少なからず魅せられていた。


「私でよければ、マネージャーをやらせてください」

これも何かの縁かもしれないと思った私は、
翌日には入部を決めた。



「まじで?いいのか?」

「分からないことだらけでたくさん迷惑をかけるかもしれないけど、やってみたいんです。頑張ります!」

「へぇ…頼もしいな」

それが初めて宮地先輩と交わした言葉だった。



「男ばっかでむさ苦しいかもしんねぇけど、
悪い奴らじゃねぇし仲良くしてやってな」

そう言ってコートを走るチームメイトを見た先輩の
表情は今でも忘れない。


なんだ、全然怖くないじゃないか。
それどころか、仲間を誰よりも大切に思う、
優しい人なんじゃないかという印象の方が強くなった。

やっぱり人を見た目で判断するのは良くない。




入部してからも、宮地先輩は私をよく気にかけてくれた。

自分のことや選手のことだけでも手一杯なはずなのに、
練習の小休憩のときに私のところへ来て

「少しは慣れたか?」

「何かあったらいつでも言えよ」

なんて声をかけてくれることが度々あった。
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