第4章 祝福する【高尾 和成】
「ねぇ、真ちゃん」
眼前の和成と花嫁を見ながら話しかける。
幸せな雰囲気が、私の心を鬱葱とさせた。
「なんなのだよ?」
「私、死のうかな」
ちらっと此方を見たのがなんとなくわかったから、
言葉を続けた。
「何を言っているのだよ、馬鹿め」
「馬鹿言ってるの」
招待客に混じり、義務的に拍手を送る。
紙吹雪がうざったい。
「本当にするのか?」
「出来たら良いな」
変わらない真ちゃんの声音。
きっと、私の本心なんか見透かしてる。
「それならできないだろうな」
メガネのブリッジを押し上げ、呆れたように言った。
「ねぇ、どうして御伽噺みたいにうまくいかないのかな」
不意に自分の10年を振り返る。
和成が思い出すことを信じて、
ひたすら待ち続けたこの10年。
「……これが現実だからに決まっているだろう」
ブーケトスに群がる女子を嫌悪感たっぷりに見やる真ちゃんは、それでも会話をしてくれた。
「だよねぇ……」
そうだ。
これは現実だ。
御伽噺のようにうまくなんていかない。
「ねぇ、この結婚式をぶち壊すのはありかな?」
一歩踏み出して、私は問う。