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Orange【黒子のバスケ/短編集】

第1章 桜ソング【宮地 清志】


「あれ?大坪サンと木村サンは?」

「そのうち来るだろ」


高尾が尋ねると、宮地先輩は辺りを見回しながら答えた。


私の隣に立つ緑間くんは、今日のために用意した贈り物入りの紙袋を持ちながらなんだかそわそわしていて、思わず小さく笑いがこぼれる。

緑間くんも寂しい……んだよね……。


「木村サンたち告白とかされてたりして〜?」

「おい高尾。それは嫌味か?」

「あ、木村サン!……いてっ」


遅れて登場した木村先輩に頭を小突かれた高尾。
そのすぐ後に大坪先輩も来て、秀徳のレギュラーが揃った。


こうして集まるのもこれが最後なんだなと思うと
胸の奥が早くもきゅっとなってしまう。


そんなセンチメンタルな気持ちを断ち切るように、
高尾が私の肩をとんとんと叩いて合図をくれた。

あ、そうだった。大事なもの、渡さなきゃ。

そう思っていると、緑間くんが紙袋を手渡してくれた。そこから3つの花束と色紙を取り出して、1年生3人で一つずつ手に取る。


どこの部でも大体そうだろうけど、バスケ部でも寄せ書きをした色紙と花束を贈るのが毎年恒例となっているらしい。


書きたいことがありすぎて、
あんな小さなスペースじゃとても足りなかった。

ただ一言伝えるなら…とペンを走らせた私のメッセージを見て、宮地先輩はどう思うんだろう。


「今までお世話になりました」

「おー、ありがとうな!」


まず緑間くんが大坪先輩に花束と色紙を渡した。
頭を下げた緑間くんの頭をわしゃわしゃと撫でる大坪先輩。

いつもなら顔を赤くして逃げるのに、
今日はやけに素直に受け入れている。


「緑間がやけに素直で気持ちわりぃ……」

「ブッ…し、真ちゃん…、て、照れて、照れてるっ…ブフォッ……」


驚いている木村先輩と爆笑している高尾。
呆れた表情で見ているのは宮地先輩だ。
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