第2章 さよならも言えずに【火神 大我】
家に着き、制服も着替えないままベッドにどさりと沈んだ。
枕に顔をうずめて今日一日のことを思い出す。
あいつがーーー鈴木が死んだ。
信号待ちをしていたところを、
居眠り運転のトラックに突っ込まれて即死だったらしい。
通夜は親族だけでひっそりとやる予定なんだとか。
お前は鈴木と仲が良かったみたいだから、
そう言って担任が下校間際に教えてくれた。
……仲が良かった…………か。
たしかに、普通のクラスメイトの男女にしては
親しいほうだったと思う。
休み時間はよく話していたし、
飲み物の回し飲みも、お互いの食べかけのパンも、
とくに気にせず食べていたし。
あいつはテニス部で、オレはバスケ部で、
部活が終わる時間がかぶれば一緒に帰ることだってあった。
なんとなく気があって、
なんとなく一緒にいると心地よくて、
オレの日常にすっと入り込んできたあいつ。
でも、それだけ。
好きな食べ物だって知らないし
好きな色も知らない。
誕生日だって覚えてない。
周りから祝われているのを見て、
おめでとうと言ってジュースをおごる程度。
休日はどんなことしていて、
何をするのが好きなのか、
考え出せばあいつのことなんて知らないことばかりで。
いまさら知りたいと思っても、
聞こうと思っても、
もう遅い。
そっか、あいつ、もういねぇんだ。