第2章 さよならも言えずに【火神 大我】
四時間目が終わり教室に戻ると、
教卓には担任がいた。
なにか連絡事項でもあるのか、
まぁ自分には関係ないと思いながら席に着く。
「火神で最後だな」
担任の言葉に首をかしげクラスを見渡すと、
全員が席についていた。
さっぱり意味がわからなくて
後ろの黒子に尋ねるかと体を捻ろうとしたとき。
「帰りのHR……と言っても連絡事項は特にないから
このまま各自下校で………………」
その言葉で思い出した。
今日は始業式、つまり四時間授業。
加えて式典がある日はどの部活も活動禁止。
すっかり忘れていた。
ぼーっとしているうちに号令が済んだようで、
ガタガタと音をさせながら教室から出ていくクラスメイト。
後ろを振り返れば、黒子はもう下校していた。
ふと隣の席を見ると、化学のプリントが置かれたままだった。
無言でそれを数秒見つめてから、
自分の席に座ったまま腕を伸ばしてそれを引き出しに突っ込む。
体育着から制服に着替えなくてはと立ち上がって、
ついでに隣の机を整頓しておいた。
そっか、あいつ、もういねぇんだ。