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Orange【黒子のバスケ/短編集】

第2章 さよならも言えずに【火神 大我】


二時間目は現社。

いつものざわめきを取り戻しはじめるクラス。


現社の担当は58のじいさん。
この先生の授業は相変わらず眠くなる。

自慢じゃないが、現社の授業は開始10分で眠くなるため、
これまで一度も真面目に話を聞いたことがない。


あいつはオレよりはやく睡魔がくるらしくて、
開始5分で机に突っ伏す。
その寝顔をこっそり見てからオレも寝てた。

テスト前には2人で黒子にバニラシェイクを献上して、
授業ノートのコピーをもらうのがテスト前の定番。



ところが、なぜだか今日に限って眠れなかった。



することもないからノートを開き板書をするオレを、
驚きつつも微笑ましそうにじいさん先生が見ていたらしい。









二時間目が終わったあとの休み時間。

ここでオレは早弁をする。


登校途中のコンビニで買ったパン。

時間はあまりないからさっさと食べてしまおうと
袋の一番上にあったシュガーデニッシュを
手に取ったところで動きを止めた。



いつもなら、

あいつがオレの机に寄ってきて、
お腹がすいたからなにかくれと言ってビニールを漁って、
惣菜パンばかりの袋からシュガーデニッシュを抜き取る。


あれは5月の下旬頃だっただろうか。

ビニールを漁っていたあいつが、
「私、甘いやつ食べたい」
なんて言いながらカレーパンを食べていて。

翌日、なんとなく、本当になんとなく、
ふと目にとまったシュガーデニッシュを買って行って。

その日の二時間目のあとの休み時間、
それを見つけたあいつが子供みたいに喜んで、
「ありがとう」って笑ったから。

その日から惣菜パンばかりの袋の中に
シュガーデニッシュが加わった。



「オレ、これあんま好きじゃねぇのに」


ぽつりと呟いて、シュガーデニッシュを袋に戻した。







そっか、あいつ、もういねぇんだ。

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