第2章 パパと娘
俺はユリをおぶり、1キロほど離れた辺りにある
小児科に連れて行った。
「先生、ユリの容態はどうですか?」
「......君の言うとおり、ユリちゃんは
衰弱している状態だ。でもそこまで酷いものではない、
今点滴をしているがそれだけでも気分もだいぶ楽になる。」
「そうですか......。」
俺はホッと息をつく。良かった......。
「......あと、この子の記憶についてだが......。」
「やっぱり何かあるんですか?」
「あぁ。」
「......もしかして、親からとかの...
虐待、とかですか?」
俺は不謹慎かなと思ったが思いっきり聞いてみた。
「私達も、そう思ったが......虐待を受けたような傷は
一つもないんだ......。きっと何かしらの大きな衝動が
あったんだろうとは思うがな......。」
「......。」
「記憶喪失は一時的なものがほとんどだ。記憶に関しては
しばらく様子を見るしかないな......。」
「そう、ですか......。」
記憶に関しては様子を見るしか、ないか......。
「......ところで君は......
あの娘をどうするつもりだね?」
「え......ユリを、ですか?」
「彼女は自分の名前しか知らない...
これでは保護者どころか親戚さえも見つけられない。
児童保護施設に行かせるの最もな話だが......」
「......ユリの為には、それが1番いいんですよね?」
「まぁ医者としては、
児童保護施設に行ってもらうのが1番いいが......」
「......?」
「彼女が、君のところに居たいと言うなら話は別だがね。」
「どういう、ことですか?」
「ユリちゃん、北山さんと一緒に居たいって......
さっきベッドで言っていたんですよ。」
看護婦さんが隣のカーテンから出てきて
微笑みながら言った。
「......きっと、今あの子が頼れる人は
君しかいない...そう思ったんだろう......。」
「ユリが......?」
ユリが、俺を頼っていてくれてる?