第2章 パパと娘
「じゃあ......お父さんとお母さんは?」
「......分からない。」
「......。」
困ったものだ......ユリは
自分の名前しか覚えていないらしい......。
そのあとも、色々と質問してみたけど、返事は
『分からない。』としか返ってこない。
......記憶がないのか?
(これは今すぐにでも、病院で診てもらわねぇと......。)
「今から病院に行くけど、歩けるか?」
「......。」
ユリはソファーから立ち上がる。
でもやはりフラついている。
(これはかなり衰弱してるな......。)
「外、寒いから...上からこれを着ろ。」
俺はユリにセーターを渡す。
けどユリは......
「......寒くない。」
「え!?寒くないって......いくら何でも、
そんな真夏に着るようなワンピースじゃ寒いだろ?」
「ううん、寒くない......。」
こんなワンピース着て寒くないとか......
「......と、とにかく!
今のお前の身体じゃ心配だ、だから着ろ。」
「......ん...」
少女は渋々そうにセーターを上から羽織る。
「よし、まだ病院は空いてるはずだから行くぞ。」
俺はユリをおぶって近くにある小児科を目指す。