第19章 別れ
宏光side
ユリに着いて行くこと20分、草木で道が茂っていった。
確かに、人はほとんど訪れないというのが頷ける。
「ユリ、森の入り口まではどれくらいなんだ?」
「あと少しなの。森の精の声が、聞こえてくるの。」
「森の精?藤ヶ谷、お前には聞こえるか?」
「いや...特に何も......ただ、
森が生きているんだなってことくらいしかわからねぇ......」
「そうか......」
森の精...そういえば、ユリのお父さんが言っていたな......
「森の精は、森を常に見張ってるの......
あと少し、あと少しで着くの。もうすぐ、
お別れなの......」
ユリは宏光達の方を見ず、淡々と呟いた。
「っ......」
なんで、なんでユリはそんなに淡々としてるの?
ただ感情を隠しているだけ?
わからねぇよ......
「ウォォォォン......ウォォォォン......!」
遠くから狼と思われる遠吠えが聞こえてきた。
恐らく......
「父上なの......」
ユリの父であり狼族の王、白狼のおさだ。
遠吠えが聞こえたのと同時に森がざわめき始めているように感じた......
きっと、13年振りに森の姫が帰ってきたから......
父だけじゃなく森も喜んでいるのだろう......
俺にはそう感じた。
「ただいま......なの。」