第16章 現実
「父上、行っちゃったの......」
「一年後......来年の今頃に会えるよ。」
「ん......」
「......よしっ!じゃあ今日から、沢山思い出作ろうぜ!」
「思い出......?」
「そっ!だから一年間、よろしくな!」
宏光はにかっと笑った。
「ん......(微笑)」
小さく微笑むユリ。
「っユリが笑った!おい藤ヶ谷!今ユリが笑った!!」
(もう、ぎこちない笑顔じゃない......心の底から、笑ってくれた......!)
「わかった!わかったから落ち着けよ(苦笑)」
(うわぁ......これで親バカ復活、先が思いやられるな。)
「(笑笑)......っそう言えば、
__ガブッ...!
『っ......くぁっ!』
『っユリ!』
ユリの首の怪我......」
先程凛太郎に首を噛まれたことを思い出した宏光は咄嗟にユリの首を見る。
しかし......
「傷、治ってるの......」
「っよかったぁ......」
(やっぱり人狼って傷が治るのか......
あ、そういえば藤ヶ谷も怪我してたけど......)
“ついで”に太輔のことも思い出した宏光は
ユリが噛み付いたと思われる右腕を見た。
「......?おい、何見てんだよ......」
(ってか今ついでで見られたような気がするんだけど......)
眉間にシワを寄せ宏光を見る。
「まだ、怪我残ってるな......」
どうやらまだ太輔の傷は癒えていないようだった。
「ん?あぁ......ユリちゃんに噛まれたやつね(苦笑)」
(そういやまだズキズキするわ......傷、少しは癒えてるはずなんだけど......汗)
「......ガヤ、ごめんなさい。痛いの?」
ユリは太輔のもとに駆け寄り謝った。
そして悲しそうな表情で腕の傷を見た。
「いいってばこれくらい!俺は平気だよ。」
「......痛そうなの。」
「だから、俺は大丈夫!」
(ホントは結構痛いけど......汗)←
強がる藤ヶ谷君だった。