第16章 現実
ユリside
「ユリ......人間世界での生活は、どうだった?
苦しかっただろ......」
「......。」
ユリは首を横に振り...
「辛いこともあったの......でも、
楽しかったの......」
「楽しい、か......人間は、我々の住む世界を壊す生き物だ。
確かに、リン達がやったことは大きな間違いだ。
しかし狼が人間と共にずっと暮らすことは“不可能”なことだ......」
「不可能じゃ、ないの......」
「......なぜそう思うんだ?」
「パパがいるの......
ガヤも、タマちゃんも、ニカちゃんも、けんけんも、
わったーさんも、宮田もいるの......パパ、リョウガ、楓も
ユリの家族なの。」
「......。」
「ユリ......パパ達と一緒にいたいの。」
「......森には帰らず、人間と暮らしたいのか?」
「父上と母上のことも好きなの......っでも......」
「今は、彼らと居たいと......」
「......」_コクッ...
ユリは数秒の間を作って頷く。
「お前の気持ちは十分に分かった......しかし、
例え一緒に暮らすとなったとしても......
いつしか、己自身で彼らを傷つけてしまうぞ......。」
「傷......つける?」
「......あぁ。」