第16章 現実
「ユリと一緒にいる時間はすげぇ楽しかった......一緒にいると、
本当に父親になったみたいで...家族みたいで.....
凄く、楽しかった......」
「俺も......お前が親バカになっている所を見るの、すげぇ楽しかったよ。
こっちまで楽しくなるから......」
「......ユリと一緒にいた時間は短かったけど、
俺の役目は終わったんだ。
やっぱりユリは、
本当の親元にいたほうがいいに決まってるんだ......」
「......。」
「さっき、『ユリは俺の家族だ』なんて言っちまったけど......
俺には...俺には......っ」
嗚咽を漏らしながら泣く北山......
「北山......」
太輔は宏光の背中をさするように手を置いた。
ねぇユリちゃん......もし、
時が来て記憶が全て消えちゃったら......
俺らのことだけじゃなくて、
北山のことも忘れちまうのか......?
でも俺は信じてる......
君は絶対北山のことを忘れないって......
けどやっぱり、不安に思うことが多い......
だからお願い、
俺やタマ達のことは忘れても......
北山のことだけは忘れないって、言って......。