第13章 襲来
「ユリ、リョウガ......」
翔は二匹(ふたり)のもとに歩み寄った。
「「グルルルルル......」」
近づくにつれて二匹(ふたり)は唸り声を上げた。
「俺はお前達を傷つけはしない......」
__ガタッ...
「っ所長!」
翔は持っていた銃をその場に投げ捨てた。
「リョウガ......」
「グルルルルル......」
「お前は、動物園で生まれた狼だと......前に言ったな?」
「っ......!?」
リョウガは言葉に反応したのか目を見開いた。
「すまないリョウガ......お前も薄々わかっていたところもあったかもしれないが、
お前は北アメリカの森で生まれた狼......ハイイロオオカミ族の王子だ。」
「っ......!」
「お前を保護し、今までずっと閉じ込めてしまっていたね......
狼が沢山いる広場とはいえ、窮屈だっただろ?」
「っ....ぐぁっ!やめろ......
それ以上、何も言うな......」
「すまなかった、リョウガ......」
「っ......止めろ止めろ止めろ!止めろぉぉぉ!」
__ガッ!
「ぐっ......!」
「ぐわっ!」
リョウガは暴れだすように爪を立て、
近くにいた西園寺の部下達であろう男達をなぎ倒した。
「っはぁ...はぁ...はぁ......」
「本当にすまなかった、リョウガ.......そしてユリ、」
「......。」
「お前には、沢山謝らないといけないね......」
「......っ」
「俺の父が原拠とはいえ、お前を研究目的の為親元から引き離してしまった......。」
「っ......!」
「お前は覚えていないかもしれないが、ユリは北海道の森で生まれた白狼、
全狼族の王の娘である王女だ......。」
「っ!?」
ユリもリョウガと同じように紅い瞳を大きく見開いた。
そしてその瞳は動揺も表していた......。