第10章 失われた記憶の真相...
あの後翔が記憶だのリセットだのと言っていたが、
ユリにはなんのことかさっぱり理解できなかった。
ただ宏光達を不思議そうに眺めるしかなかった。
「お前が俺から、ユリを奪ったからだ......。」
宏光を睨みながら言う翔。
「っそんな理由で......
そんなくだらない理由でユリの記憶を消したのかよっ!」
「お前に何がわかるっ!」
「っ......!」
「お前は......お前は一夜にして俺から奪ったんだ。
俺は、お前が知っているずっと前からユリを知っている......
ユリを拾った、赤子の時から......」
「ぁ、赤子の時から......?」
「そうだ......12年間、俺達はずっと一緒だったんだ。」
「......。」
12年間......確かそうだったの......ユリは......
__12年前、北海道のとある深い森...
「ふぇ...ぇえ......(泣)」
「っこんなところに人間の赤ちゃんが!」
まだ18、9歳の青年は広い洞窟で竹で作られ藁が敷かれた布団で寝ている
人間の赤子を見つけた。
「っ父さん!こんなところに人間の赤ちゃんが!」
「なにっ!?」
「っほら!なんでここに、人間の赤ちゃんが......」
青年は赤ん坊を抱き上げ父へ見せる。
「っ......って翔......」
「へ?」
「この子は一見、人間の子供に見えるが間違いなく人狼、狼の子だ。」
「っえぇぇ!?」
「これっ!赤ん坊がびっくりするだろ......」
「っごめんなさい......」
(この子が......狼?)
翔は抱き上げた赤子を見る。
「どうやら親はエサを取りに行ってるんだろう......ほら、
よく匂いを嗅いでみれば獣臭いだろう。これは、狼の匂いだ。」
「っそうなんだ......」
(さすが父さんだ......狼かってすぐ判断できる......)