第7章 本当のパパ?
「一体何のようだ?」
「昨晩捕らえた狼の子供が鍵の掛かっていない檻から脱走したそうです。
なお狼はこの建物逃げ込んだという情報でして......」
「なるほど......俺も見かけたらすぐ知らせよう。」
「っ!?」
ふたりの会話を聞いて、ユリは目を大きく見開いていた。
「......やはり、マンションを出たのはあの狼のことが心配だからだったのね......」
「...リョ...ガ......」
ユリは小さく誰かの名前を呟いた......。
「......大丈夫だユリ、もう少しでお前の友達に会える(微笑)」
「......。」
どうやら"リョウガ"というのはあの狼の子供の名前らしい......。
「......リョウガ、捕まえたなの?」
ユリは翔を見上げながら言う。
ユリの瞳は怒りを帯びており眉をひそめていた......。
「......これも、
"お前の為"なんだよ(微笑)」
怒りを覚えるユリをよそに翔はユリの元にしゃがみ込み微笑んだ。
「......。」
ユリは更に顔を歪めた。
ピピピピ...
そしてその時、朝倉の胸元から機械の音が聞こえてきた。
「"ピッ"...どうしました?」
『先程、狼の子供を無事捕獲しました。』
逃げ出したリョウガが研究員に捕獲されたという通達だった。
「そう、ならよかったわ。......所長、あの狼はどういたしますか?」
「俺の部屋に連れてくるよう伝えてくれ。
せっかくユリの為に連れてきたんだからな(微笑)」
「......わかりました。......では、その狼は所長室まで連れてきなさい。」
『了解いたしました。......あと、それと......』
「......?どうしたの?」
『......っ何者かが、我々の研究所に侵入したようです。』
「っなに!?」
「朝倉......何があった。」
「っ所長......」