【ONE PIECE】もしもあなたが連れて行ってくれたなら
第2章 幼き日の約束
「……あ」
(そうだ)
「どうしました?」
目の前の海兵がわたしの声に反応して、丸い目を大きく見開いた。反応が早い。
「部屋に忘れ物しちゃって……取りに行って来るね」
「あァ、そうですか。かしこまりました」
海兵は目を細めて笑う。その瞬間に、気が緩んで体の姿勢が変わる。
「アユナ、行こ」
わたしはアユナの手を取って、城の中へ戻ろうとしたが……。
「アユナ」
これは戻るふりだ。本当の目的は違う。
わたしは小声でアユナに話しかける。
「わたしが合図したら、“剃”を使って」
「え? ミーウ……」
「行くよ。せーの」
アユナの返事を待たずに、わたしは“剃”を使った。アユナも言われた通り、技を使ってわたしの後を追う。
わたしたちはそのまま隠し通路がある小さな花園へと行き、小さな穴を通って城の外へと出た。その後も、小走りに森の中を駆ける。
“竜国島”は大きな楠がある丘を中心にその周りを森が囲んでいる。わたしたちが住んでいるお城はその丘の南側に位置していた。城の周りにも森が広がっている。
「……」
(ここまで来たら、もう大丈夫でしょ)
お城から抜け出して、しばらく走った後、さすがにもうバレないだろうと思って走るのをやめた。