【ONE PIECE】もしもあなたが連れて行ってくれたなら
第4章 前夜祭
「おれたち嬉しくってよ! やっと、お前らの夢が叶う瞬間が来ると思うと、いてもたってもいられなくなっちまってな」
アスラはニッと歯を見せて笑う。
「自分の弟のように可愛がってきたんだ。お祝いくらいくらいさせてくれよ」
気付けば、街の広場まで来ていた。アスラと話しながら、引き摺られるようにして歩いていたから、ここまで来ていることに気付かなかった。
広場の中央には大きなテーブルが用意されており、その上には食事が盛られたお皿がたくさん置かれている。
「……これは?」
「お前たちの出航を祝う前夜祭のためのご馳走だ!」
「……」
アスラは得意気に腰に手を当てて言った。
「いいのか? おれたちは……」
「海賊になるから、関わらない方がいいってか? そんなの、今更じゃねェか」
アランはニヤッと笑って、後ろから他の街の住人に引き摺られているキッドを見た。
「あいつがずっと言ってただろ? 〈ひとつなぎの大秘宝〉を手に入れるんだって」
「……」
ーーミーウと出会った後、キッドは盗みをしていたことを街の人たち全員に謝った。そして、働いて返すことを約束した。街の人たちはキッドの生い立ちを理解していたし、心の優しい人ばかりなので許してくれた。その後、キッドとおれは街の人の手伝いをしてお金を貰ってまともな生活を送るようになった。それと同時に、キッドは夢を語るようになった。それが〈ひとつなぎの大秘宝〉を手に入れることだ。普通の人なら笑うだろう。そして、海賊になるなんて……と見下すだろう。だけど、街の人たちは……。