第12章 花言葉の想い

「え……ちょ……っ、キラー……」
　髪を触っていたキラーの手がアユナの顎をすくい、言葉を飲み込むように口を塞いだ。すぐに離れるかと思いきや、中々離れる様子がない。あまりの息苦しさにアユナが身を捩ると、その隙を狙っていたのか口の隙間から舌が入り込んできた。
　アユナの思考はぴたりと止まって、また急速に回り始めた。
「ん……っや、キラー……」
「アユナ」
「ん、ふぅ……っ」
　キラーは抵抗する腕をやんわりと、けれど力強く押さえつけ、また無理矢理塞がれてねじ込める。
　アユナは酸素不足で思考回路はぐちゃぐちゃだった。
（何でこんなことするの？　キラーは他に好きな人がいるんじゃないの？　わたしのことなんて、何とも思ってないんでしょ？　わたしはこんなに混乱してるんだよ？　そんなの……）
「いや……っやめて！」
　ー不公平だよ。
パシッ
　キラーの手に赤みがさす。
　アユナの手にもじんじんと痛みが広がった。
　拘束を解いたキラーから離れて、一歩、一歩、後ろに後ずさった。ーー痛む胸を押さえたまま。
「……どうせ、わたしのことなんか……なんとも思ってないくせに」
　キラーの表情は前髪で隠れて見えない。