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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第1章 吸血鬼、赤司征十郎




「…あ……、」


「ヒヒヒっ、久々の上玉だ…」




不気味に笑いながら茂みから姿を現して
一歩私に近付いたそれ


月明かりに照らされた顔には、
巨大な目玉が一つだけついていた




「バカな娘だ…夜の森に1人で入ってくるとは…」




淡々と話すそれが近付いてくるのに比例して私は後退る


今まで噂だと思っていた、怪物が

今、目の前にいる


しかもどうやら、私を喰おうとしているらしい



こんな状況になって、




「や………いやぁぁっ!!」





逃げない娘が、いるだろうか


私は持っていたバスケットをその怪物に投げつけると、一目散に道から外れて茂みの中に逃げた




「ムダだよ、お嬢さん…」




すぐに後ろから追い掛けてくる気配がした


私はもう何が何だかわからなかった



そして、冒頭に至る、という訳だ

なんて悠長に話している余裕なんてない




心の中で、何度も何度も神様や母に助けを求めたけれど


ここは神様すら手の届かない、
怪物たちが巣くう森の中だ


誰も助けになんてこないだろう



必死に走る内に、ついに限界がきたのか
私は地面に飛び出ていた木の根に足をとられて、その場に倒れ込んだ



なんとか起き上がったまでは良かったものの、再び走り出そうとした目の前に




「そろそろ鬼ごっこは終わりにしようか?」


「!!」




今まで後ろにいたはずの怪物が進行方向に立ちふさがった


私は肩で息をしながら、またじりじりと後退った



私がこんなに必死で走ったというのに、
目の前の怪物は全く息が乱れていない


やっぱり私と怪物では身体能力が違いすぎるようだ


とりあえず、もう逃げてもムダらしい




怪物と向かい合ったまま後ろに歩みを進めると、背中に固い感触


まさか、と思って顔だけ振り向くと、
私の行く手は大きな樹に阻まれていた



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