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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第1章 吸血鬼、赤司征十郎



でも、その父と母が病気で亡くなってから
私の日常は地獄になった


1人取り残された私を引き取る羽目になったのが、今の家にいる母と姉


…今の家といっても、元々私が父や母と暮らしていた屋敷にあのひとたちが押し掛けてきたのだけれど


思い出の家を乗っ取られたみたいで、
すごくすごく悔しかった

いや、現在進行形で今も悔しいけれど


それに、私は引き取られたというよりも召使いとして雇われた、という感じだ


でも、住み込みで部屋を与えられただけでも幸いだった



部屋というか、屋根裏の物置みたいな所だけれど




こき使われて、何度も怒られて


それでも良かった


私の母が言っていたから




『生きてさえいれば、きっといつか幸せになれるの

あなたが好きな童話のお姫様だって、
最初はつらい思いをしたけれど
最後は王子様と幸せになれたでしょう?』




そんな母の言葉に励まされて、生きてさえいれば必ず報われる、と信じて頑張って働いた


そして、報われないまま10年が過ぎた




ふ、と目を開けると、一瞬だけ見えた母の姿は真っ暗な森に溶けていった


…楽しいことを考えようとしたのに、
結局こうして陰気なことになってしまう



私も随分と心が濁ったな、なんて思いながら知らぬ間に流れた涙を拭った




ら、







ガサガサッ






「………?」




目を擦る手を止めて、音がした方を見る


なんだろう
また兎か何かかな



呑気に考えていたけれど、次第に大きくなっていく音に本能的に兎じゃない、と感じた


兎じゃない

もっと大きい何かだ


鹿?

…いや、違う




「………………っ、」





嫌な予感が止まらない


手だけじゃなくて全身が震えた



ガサガサ、私のすぐ目の前の茂みが揺れた



“ウウウ…、”


「!」




明らかに兎でも鹿でもない唸り声


私は無意識に一歩後退った




…………うそ、でしょう…?




ガサガサッ



「―――――!」



目の前の茂みから出てきたのは

兎でも鹿でも、狼でも梟でもなく





「…これはこれは、美味そうな娘だな」





明らかに人間でもない、
でも人間の形をした何かだった
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