第1章 吸血鬼、赤司征十郎
「さぁ…もう諦めるんだな」
じゅるり、と涎を垂らすそれに
私は恐怖で悲鳴さえ上げられなかった
でも、心のどこかではとっくに諦めていた
あの家に戻ったって、絶対に死ぬまで召使いだ
それならいっそこの場で殺された方がいいのかもしれない
どうせ私にはもう、愛してくれるひとなんていないんだから
『生きてさえいれば…』
ごめんなさい、お母さん
私も、もうそっちに逝くみたいです
「大丈夫だ、あまり痛くないように
…一気にやってやるからな!!」
ガバッ、と口を開けて迫ってきた怪物に
諦めて目を閉じようとした
正にその瞬間だった
頭上で、ガサガサッ、と木の葉が揺れる音がしたと思ったら
ザッ!という鋭い音と一緒に、
「………?」
「……っお前は…!」
「俺の森で何をしている」
すごく綺麗な、男のひとが降ってきた