第4章 恨み憎む男ー灰崎ー
「…っお前、俺の話を聞いてたか?」
「今のは振り下ろしたわけじゃない、振り上げたんだ」
「…戯れ言を…っ」
ぐい、と口の端に滲んだ血を拭って
灰崎さんはまた槍を構えた
赤司さんはまだ攻撃を受けてはいないものの、私に気をつかってか眉間の皺は消えない
「…………っ!」
その間も、私は動かない身体を必死に動かそうとしていた
でも術とやらが余程強力なのか身動き一つ取ることが出来ない
……目の前で大切なひとが闘っているのに、原因を作った本人の私は何も出来ないなんて
もどかしくて堪らなくて、
無意識の内に悔し涙が目尻を濡らした
そんな私を余所に再び激しい金属音が響く
その音に顔を上げると、月明かりに照らされた2人の顔が見えた
赤司さんはやっぱりどこか苦しそうな表情をしている
一方、灰崎さんは不敵に笑っていた
その冷たい笑顔に体中が凍り付いた気がした
まるで、赤司さんを追い詰めるのを楽しんでいるような表情
…本気で、ひとを殺そうとしている目だ