第4章 恨み憎む男ー灰崎ー
「…実力でも考察力でも、明らかに俺が勝ってる」
じゃあ何故倒せないでいるのだ
「…だけどあの吸血鬼、俺が何度立ちふさがっても毎回毎回闘いもせずに尻尾を巻いて逃げていくんだよ」
絶対嘘だ
赤司さんがそんな風に逃げる訳ない
多分闘う価値もないとかそんな風に思っただけだろう
勝負しろ、と迫る灰崎さんを顔色を変えずに避ける赤司さんが目に浮かんだ
「俺の強さに恐れをなしたのかはわからねーけどな
……とにかく、」
言いながら灰崎さんはもう一度私の前にしゃがみこんだ
そのままくい、と顎を指先で持ち上げられる
思い切り振り払ってやりたいけれど、
身体が動かないせいで叶わない
「このままじゃあ勝負がつかねーからな
あいつを本気にさせる為にも、お前に協力してもらうぜ」
「…………っ、」
ククク、と笑った灰崎さん
言いたいことは色々あったけれど、
でもこれだけは一番言いたかった
考えは卑怯ではあるものの筋道が通っている
でも、灰崎さんは一つだけ決定的な勘違いをしている
…攫う相手が間違っていないか
赤司さんを誘い出して勝負したいなら、
私じゃなくて「あの子」とやらを連れてくるべきだろう
何をしている
人違いもいいとこだ
説明したくても口は動かないので
仕方なく彼を見つめるしかできなかった
そしたら彼はククク、と笑って口を開いた