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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第3章 不穏な心




「は、はぁ…っ」



真っ暗な森の中、私は元来た道を走って戻っていた

そして、さも当たり前かのように足がもつれて地面に倒れ込んだ



「………っ、」



ゆっくり上半身を起こして服についた土を払う


再び走り出そうとしたけれど、
震える足にはもう力は入らない


立ち上がることすらできなくて、
私はその場に座り込んでしまった



ドクン、ドクン


心臓がありえない速さで鳴っている


ズキン、ズキン


胸の奥もありえない程痛くなった

赤司さんが血を吸っているのを見たのは初めてだった

でもそんなことは問題じゃない


無意識の内に頬が濡れた

目が熱くなって視界がぼやける



そうだ

赤司さんが吸血鬼だと実感させられたことがショックだったんじゃない


ショッキングな光景を見てしまったからでもない



ただ、


私以外の女のひとを抱き締めていたことが何よりショックだった

私以外の女のひとの血を吸っていたのがこれ以上ないくらいに嫌だった


……私以外の女のひとに触れている彼が、ただ悲しかった



「………っ、」



ぽろぽろと零れてくる雫をワンピースの袖で拭う

やっとわかった


どうしてこんな気持ちになるのか

どうして涙が止まらないのか


――――私、赤司さんが好きなんだ


理解できた所でますます涙は止まらなくなった


あの女のひとなんだろうか
赤司さんが言っていた娘というは


やっぱり我慢できなくて吸いにきたんだろうか

…それほどまでに焦がれていたんだろうか


どうして気付かなかったんだろう



優しく笑って髪を梳いてくれる彼が、私を通して別の女のひとを見ていたことに

彼の一番近くにいた私が、どうして気付けなかったんだろう


そんなことも知らずに、私は今までずっと赤司さんの隣にいた


何も、知らずに



むしろ知らないままでいたかった


…いや、でもいつかわかってしまうことだ

その“いつか”が今だっただけ



ただそれだけだ



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