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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第3章 不穏な心




「………名前?」



しゃくりあげる声が聞こえなくなってから、
腕の中の名前の顔を覗き込んだ



「………………」


「(…寝た、か)」




ふぅ、と溜め息をついた


ゆっくりと細い身体を抱き上げて、
すぐそこにあった俺のベッドに横たえる


目尻に残る水滴を親指で掬い上げて、
そのまま閉じられた瞼に唇を落とした




「…すまない」




もう一度囁いて、俺の本能を煽る首筋を隠すように彼女にシーツを掛けた



もう一度ソファーに戻って、溜め息

前髪に指を差し込んで俯いた



目を閉じるだけで名前の泣き声が蘇ってくる


思わず目を開けた



すぐ視界に入ってきたグラスに手を伸ばす

そして、中に注がれていた薬を一気に飲み干した



ダン!とグラスをテーブルに叩き付ける


それからすぐにハッとして、急いでベッドを振り向く



たが名前が起きる気配はなかった

きっと泣き疲れていたんだろう




「…………っ…」




何をやっている、俺は


もう二度と飲まないと決めたのに

自分の堪え性の無さに自嘲した


いや、これは俺が吸血鬼である限り抑えられないようにできている本能だ



理性でどうにかできるものじゃない


それだけに、ギリギリの所で止まれた自分に拍手してやりたいくらいだ




『…あなたは吸血鬼なんですか?』




ふ、と10年前の記憶が脳裏に浮かんだ





『私の血で良かったら、どうぞ』




サラリととんでもないことを言ってのけたその少女



…本当に肝が据わっていた




だが



俺の耳からは、まだ名前の泣き声が離れない


…そんなに怖がるとは思っていなかった


まさか泣かせてしまうなんて




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