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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第3章 不穏な心



すると、腕で遮られた視界の向こうで赤司さんの気配が変わったのがわかった




「…名前?」




少しだけ不安を帯びた声がして、両肩を掴まれて容易く体を起こされる


でも私は顔を腕で隠したまま何も言えなかった




「…すまない」




心無しか焦りを含んだような言葉

それから間髪入れることもなく、
私は温かい体温に包まれた




「…っ、…」


「すまない…本当に冗談だ」



赤司さんはそう言いながら私の頭を撫でた




「君の血を吸うつもりなんてないさ」




きっと赤司さんは私を安心させる為に言ったんだろう


でも、その言葉に私はもっと苦しくなった




「…すまない、泣かないでくれ」


「…っ、う…」


「名前…」




違う

違うの



血を吸われることが怖かったんじゃないの


ただ




「名前……」





その子の代わりにあなたに求められるのが
何よりも悲しかった



抱き締めてくれる力強い腕も
温かい手も、優しい言葉も



今の私には、何もかもが残酷だった




私は、あなたになら吸い殺されてもいい
そう思えるようになったのに


別の娘の“代わり”としてしか求められないなんて




「すまない、名前」


「…っ!」




赤司さんが何気なく口にする謝罪が
私の気持ちに対する拒絶に聞こえて




私は彼の背中を抱き返すこともできずに、
温かい腕の中で残酷な言葉を聞き続けた
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