第2章 本当の赤司征十郎
赤司さんにずっと頭を撫でられて、背中をさすられて
気が付いたら、湖の真上にあった月はもう大分傾いていて、蛍も消えていた
「……すみません、取り乱して…」
「いいさ、そうさせる為に来たんだから」
ゆっくりと身体を離しながら
赤司さんは私の頬に手を添えた
親指で目尻を拭われて、それがくすぐったくて肩を竦めてしまう
それを見た赤司さんはまた優しく笑って髪を梳いてくれた
ああ、もう
どうしてことひとは、
「…赤司さん」
「ん?」
「…どうして、こんなにして下さるんですか」
「?」
「どうして殺しもせず、こんなに良くして下さるんですか?」
「…………」
「私、あなたに何をして差し上げればいいんですか?」
今までずっと気になっていたことを素直に聞いてみる
どうしてこのひとは、こんなにも私なんかの為にここまでしてくれる?
赤司さんは私の髪を滑る手を止めて、
じっと私の顔を見つめた
少しの沈黙の後、赤司さんはゆっくりと私の頭から手を離した
「…それより」
「?」
「俺も君に聞きたいことがあるんだ」
「え?」
…はぐらかされた気がするけれど、何やら不安げな表情をされてしまっては言い返せない
「何ですか?」
「…君は、俺が怖くないか?」
「え……」
ちょっと
今になってそれを聞くか
「人間にとって、俺の印象は最悪だろうからね」
君も、俺の噂を聞いたことがあるだろう?
そう言った赤司さんはまた目を伏せた
…確かに聞いたことがある
あまり良いとは言えない噂
でも
「…私、ずっと村のひとたちの噂を信じていました」
正直に話し始めると、赤司さんが少し動いた気がした
私は慌てて続けた