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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第2章 本当の赤司征十郎


「…私、笑っていませんでしたか?」






肩を抱いていない方の手で、赤司さんは私の手を取った


その指を見つめて、彼はゆっくりと目を伏せた



「…こんなに傷だらけになっても、
君は文句一つ言わずに過ごしていたな」


「…………」


「ずっと堪えていた」



赤司さんが私の肩を抱く腕の力を強めた


私は何故だか、目がすごく熱かった




「…もう、あんな思いはさせないよ」


「…え…」


「これからは俺が君を護るから」


「……赤司、さん…」


「だから、もう我慢しなくていい」


「!」




赤司さんは私の手を離すと、
私の身体をふわり、と抱き締めた


マントの中に包まれるようにして、
赤司さんの力強い腕が私を締め付ける



少しだけ息苦しいけれど、
決して嫌ではない



「今まで頑張ったな、10年間も」


「………」


「もう大丈夫だ」



赤司さんが耳元で言ってくれる度、
自分の身体が小さく震えるのがわかった



……どうして、そんなに何もかも見透かしたように話すの


この前初めて会ったばかりなのに、
どうして私自身気付いていなかったことを
そんなに簡単に言い当ててしまうの




どうして



「…今までつらかった分、これからは俺が君を護るから」


「…っ」




思わず赤司さんの肩を掴んだ

赤司さんは私の頭をぽんぽん撫でてくれた




…も、だめだ

堪えられない



赤司さんの胸に額を預けると、目に溜まっていた雫は重力に従って頬を流れ落ちる




すると、見えないはずなのにその瞬間に赤司さんはもっと強く私を抱き締めた




『これからは、赤司君が護ってくれるから』




あの時は、桃井さんの言っている意味がまったくわからなかったけれど


まさか、実際に赤司さんから言われて
こんな気持ちになるなんて




「…名前」



吐息混じりに名前を呼ばれて、
心臓が痛いほど跳ねた



「……もう大丈夫だ」




耳元で言われた言葉に、私は10年振りに人前で泣いた





どうして


このひとは吸血鬼なのに




どうしてこんなに、温かいんだろう
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