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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第2章 本当の赤司征十郎


しばらく歩くと…
いや、実際に歩いてくれたのは赤司さんだけだけれど

とにかく、しばらく森を進んだ所で
赤司さんはようやく立ち止まった



…こんなに森の奥まできたのは初めてだ


赤司さんは私の体をゆっくり下ろすと、
「見てごらん」と私の背中を押した


「………?」



こんなに暗い森の奥に一体何があるというんだろうか


疑い半分で言われた通りに前を向く


すると、


「………!」



目の前には小さな湖があって
その水面には綺麗な月が映っていた

いや、確かにそれだけでも十分に綺麗だけれど

私の目を奪ったのは、その水面から数え切れないほどに湧き上がる光の粒だった


小さな光が次から次へと舞い上がって、あっという間に私と赤司さんを包み込む



「…すご、い」



無意識の内に零れた言葉は紛れもない本心

だって本当にすごい


今まで見たこともないくらい幻想的な光景に、思わず息を飲んだ



「ここの蛍はね、鈍感なんだ」


「鈍感?」


「夏が終わったことになかなか気付かない」


「だから、こんな時季まで?」


「あぁ、冬になって初めて夏が終わったと気が付くんだ

毎年そうなんだよ」


「ふふ、可笑しいですね」


赤司さんの言い方が面白くて思わず笑ってしまう


すると、それを見た赤司さんは至極安心したような驚いたような、すごく嬉しそうな顔をした


「…やっと笑ったな」


赤司さんが呟いた言葉に私は隣にいる彼を見上げた


すると、赤司さんは蛍ではなくて私を見ていた



………いま、なんて…

「私、笑っていませんでしたか?」

「あぁ」


「…意識していませんでした」


「意識して笑ってどうするんだ
無意識の内に笑うものが本物だろう」


そう赤司さんは言いながら
私の肩をゆっくりと抱き寄せた


びっくりしたけれど、振り解こうとは思わなかった



「…時々、村に下りて見掛けた時も屋敷にきてからも、君は一度も笑わなかったな」


「…村に?」


「人間を襲おうとは思わなかったが

単なる暇つぶしで何回か行ったことがあるんだ」


「そう、なんですか…」


「その時、行く度に君を見掛けたんだが
君はいつも悲しそうな顔をしていたよ」


「……………」



知らなかった


赤司さんが村に来ていたなんて




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