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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第1章 吸血鬼、赤司征十郎



その帰り道だった


姉に言われた通りにミルクを買って、家に帰る途中


ふと空を見上げると、
月はもう大分傾いていた




「…寒……、」




ひゅう、と風が吹くと薄い生地のカーディガンもワンピースも一気に意味をなくす


猟師に間違えて銃で撃たれないように、と
あくまで見分けるための色彩を与えられただけで、防寒の役割なんて全く果たしていない



カーディガンの襟を精一杯引き上げて、
私は家路を急いだ




急いだけれど、




「………………」




しまった


ここ辺りの領主は悪知恵が働くひとで、
昼間は無料で通れる道も夜になると通行料をふんだくる


私が来た時はまだ無料で通れたけれど、
今その道には役人が立っていた



目の前を通り過ぎる際に
法外な金額を要求されてしまう




「(……どうしよう)」




勿論、ミルクを買う分しかお金は持たされていない


…あのひと、絶対にこうなるのもわかってたんだろう



きっと今頃、道に立ち尽くして困っている私を想像して笑っているに違いない



それで、どこかで野宿でもして明け方帰ってきた私を叱るのを心待ちにしているんだろう



『すぐ買って来なさいと言ったじゃない!』


『本当に仕様がない子!』




「…っ」



そう言って、叩かれるに決まってる




…いやだな


この前は確か、姉が割った花瓶を私のせいにされた時に母に叩かれたんだ



その時の頬の痛みが蘇ってきて、
少しだけ涙が滲んだ


だめ、泣くな



とりあえず、どうにかして家に帰らなきゃ


…いや、断じて帰りたい訳じゃない


できるものなら、このままどこかに消えてしまいたいくらいだ



どこかに、消えてー…





ふ、と横を見る





「……………あ…」




するとそこには、ちょうど森の入り口があった


奥に続く小道は真っ暗で、
昼間の散歩道とはガラリと雰囲気が違う



…そうだ、確かこの森を抜ければ家の裏手に出るはず

流石に、森の中にまで役人はいないだろう

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